影郞とシャボン玉

シャボン玉の唄を作りながら

ふたりシャボン玉とフレンチキスしたね

その頃は私はトマトとシャボン玉と

あなたが好きで止まらなかった

あなたは幾つ?影郞兄さん

私はたった5歳

嬉し涙も何も知らない

キョトンとした目

キョトンとした口

初恋も何も知らなかった私に

ねずみ花火を教えてくれたお兄さん

 

あれは小2の夏

七夕さんの日7月7日

雨降り花が沢山なった造木林の側

夜の8時45分

お祭りのあとひとり浴衣姿で歩いていた私

影郞兄さん遠くから走って捜して

駆け付けてくれたね

おさげ髪の私を輪ゴムだねと笑った

下駄の鼻緒が切れた私を

抱っこして家までダッシュしたよ

初恋と呼ぶのはこの時なのかも

知れない

 

嬉しくて堪らなく

花火をやると言われたときに

おさげをほどいてね

ウェーブヘアーにセーラー服

見せたくて良いったらね

さっきの三社やん浴衣のおさげのほうが

可愛いと言った がっかり

言葉を失った8歳の七夕さん

 

 

 

*村下孝蔵シャボン玉と少女になる